ICTは「利用者と向き合う時間」を作る道具。静岡県富士市で主任ケアマネたちが学んだ、無理のないDX推進法

「ICT化を進めたいけれど、何から手をつければいいのかわからない」「ケアプランデータ連携システムって本当に便利なの?」そんな悩みを持つ介護現場のリーダーは少なくありません。

静岡県富士市で開催された主任介護支援専門員(主任ケアマネ)向け研修では、単なるツールの紹介に留まらない、業務効率化の「その先」を見据えた熱い対話が行われました。本記事では、NPO法人タダカヨによる「出張タダスク」の事例を通じて、現場が納得してDX(デジタルトランスフォーメーション)に踏み出すためのヒントをお伝えします。

ケアプランデータ連携システムとAI活用、今なぜ必要なのか?

現在、介護業界では「ケアプランデータ連携システム(通称:ケアプー)」の導入が国を挙げて推進されています。これは、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所の間で、これまで紙やFAXで行っていた書類のやり取りをデジタル化する仕組みです。

また、生成AI(ChatGPTなど)の登場により、支援経過の要約や文案作成が驚異的なスピードで行えるようになっています。これらは単なる「時短」ではなく、深刻な人手不足の中で「ケアマネジャーが本来の専門業務に集中する」ために不可欠なインフラになりつつあります。

富士市での課題:「登録はしたけれど、活用できていない」

研修前の富士市では、データ連携システムに登録はしているものの、実際の利用者は「0(ゼロ)」という状況でした。「使い方が難しそう」「相手の事業所が対応していない」といった心理的・環境的ハードルが、導入の足を止めていたのです。

【実践事例】出張タダスク in 富士市|現場の「モヤモヤ」を解消する

令和8年2月12日、富士市介護支援専門員連絡協議会の主催で、約80名の主任ケアマネを対象とした「ICT活用研修」が開催されました。

1,現場を知る講師による「居宅のICT化」講義

講師を務めたのは、自身もケアマネジャーとして現場に立つ「ゲンゲン(伊藤玄哉氏)」や「おハム」「RYO」といったタダカヨのメンバーです。「自分たちと同じように日々の業務に追われ、モヤモヤを感じている」講師だからこそ語れる、地に足のついたICT活用術が紹介されました。

2,「ケアプー」の仕組みより「広がり」を伝える

システムの操作手順を解説する前に、「他地域での拡大状況」や「情報基盤としての将来性」を解説。なぜ今、地域全体で取り組む必要があるのかという「大義」を共有しました。

3,トークセッション:リアルな活用術の公開

実際にツールを使いこなしているケアマネ同士が、テレワークの体制づくりや、AIを使った支援経過作成のコツを披露しました。座談会形式で進められたことで、単なる情報提供にとどまらず、「自分たちの現場に置き換えるとどうなるか」を考えながら聞ける時間となり、会場全体に一体感が生まれていました。会場からはうなずきや共感の反応も多く見られ、現場の実感に根ざしたやり取りが、参加者にとって大きな学びにつながったようです。「かっこいいケアマネ」として働く姿は、参加者に強い刺激を与えるとともに、研修全体の満足度を高める印象的な場面となりました。

参加者の声から見えた「期待」と「具体的な不安」の正体

研修後のアンケートでは、「大変参考になった」「参考になった」を合わせて94%という極めて高い満足度を記録しました。

現場から寄せられた「気付き」の声

  • 「ユーザー辞書やクリボー(クリップボード拡張ソフト)はすぐに使えそう。デスクワークが短縮できると確信した」
  • 「AI(ChatGPT)で文章を整えることで、利用者一人ひとりに合わせたアセスメントの質を落とさず、時間だけを短縮できると感じた」
  • 「ICTの先にある『利用者や家族の笑顔』という目的を忘れてはいけないと再認識した」

一方で残る「リアルな不安」

一方で、主任ケアマネならではの切実な不安も吐露されました。

  • 「法人のICT環境(ハード面)が整っておらず、自分一人の努力では限界がある」
  • 「PCスキルに自信がなく、工程が多いとやり切れるか不安」
  • 「地域全体で揃わないと、データ連携のメリットが最大化されない」

こうした不安は、個人の問題ではなく「地域の課題」として捉え、組織や自治体を巻き込んで解決していく必要があることが浮き彫りになりました。

今日からできる!ICT・AI活用を成功させる3つのステップ

研修を通じて見えてきた、無理のないDX推進のステップは以下の通りです。

①小さな「小技」から始める
いきなりシステムを全導入するのではなく、ユーザー辞書登録や音声入力など、その日から効果を実感できるツールから触れてみる。
②「何のために」を言語化する
「楽をするため」ではなく、「浮いた時間で利用者と話すため」「質の高いプランを作るため」という目的を事業所内で共有する。
③仲間をつくる
富士市の事例のように、地域のケアマネ同士で「どう使っているか」を教え合うコミュニティ(タダカヨの研修など)に参加し、孤独な格闘を避ける。

ICTは「かっこいいケアマネ」への近道

ICTやAIは、決してケアマネジャーの仕事を奪うものではありません。むしろ、煩雑な事務作業から私たちを解放し、専門職としての知見を最大限に発揮させてくれる「強力な相棒」です。

富士市の主任ケアマネたちが感じた「これならできるかも」という高揚感は、地域の介護をアップデートする大きな一歩となるはずです。

「ICT活用で現場を元気にしたい」 そうお考えの自治体・団体の皆様、NPO法人タダカヨと一緒に、現場に寄り添った研修を企画してみませんか?

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