介護現場の「FAX印刷」をなくす3つのステップ|無理のないICT化で業務負担を軽減する方法

「またFAXが届いている……」
バタバタと忙しいケアの合間に、複合機まで受信した紙を取りに行く。山積みの受信紙から自分宛てのものを探し出し、ダイレクトメール(DM)のチラシが混ざっていてため息をつく。
介護現場において、FAXは今なお欠かせない連絡手段です。しかし、すべての連絡を「紙」でやり取りし続けることは、現場のスタッフにとって大きな負担となっています。

「FAXを完全に廃止するのは難しい」と感じているなら、まずは「FAXの印刷」を止めることから始めてみませんか?今回は、現場の負担を最小限に抑えながら、着実に業務を効率化するスモールステップをご紹介します。

なぜ「FAXの印刷」が介護現場の負担になるのか?

「紙」でのFAX管理には、目に見えない多くのコストと労力が隠れています。

  • 「確認」のための移動時間: 事務所の隅にある複合機まで、一日に何度も往復していませんか?
  • 情報の埋没: 大量のチラシに紛れて、重要な指示書を見落とすリスクがあります。
  • 検索性の低さ: 「先週届いたはずの連絡」を探すために、過去の紙束をめくる時間はもったいないものです。
  • コストの発生: 用紙代やトナー代、さらには紙を保管するためのスペースも必要です。

相手(医療機関や他事業所)がFAXを使っている以上、こちら側でコントロールできるのは「届いたFAXをどう処理するか」という点です。

【ステップ1】今の複合機で「パソコン保存」に切り替える

もっとも手軽で、コストをかけずに始められるのが、今ある複合機(コピー機)の設定変更です。

具体的な方法

多くのオフィス用複合機には、受信したFAXを印刷せず、指定のパソコンや共有フォルダー(サーバー)にPDFとして自動保存する機能が備わっています。

活用シーンとメリット

必要なものだけ印刷:

パソコンの画面で内容を確認し、どうしても紙が必要なものだけを選んで印刷します。これだけで、不要なDMを捨てる手間と紙代が大幅に削減されます。

自分の席で確認:

複合機まで行かなくても、手元のパソコンで「何が届いたか」が分かります。

【ステップ2】「クラウド型FAX」を導入して場所の制約をなくす

ステップ1をクリアしたら、次は「事務所のパソコンでしか見られない」という制限をなくしましょう。ここで役立つのが、MOVFAX(モバックス)などの「クラウド型FAXサービス」です。

具体的な方法

従来の電話回線ではなく、インターネット回線を通じてFAXを受信します。受信した内容は、メールのようにウェブサイト上で閲覧できます。

活用シーンとメリット

外出先・ケアの現場で確認:

訪問中のケアマネジャーや、施設内を移動しているリーダーが、スマートフォンやタブレットからすぐに内容をチェックできます。

自動整理:

相手先や日付ごとにデジタル保存されるため、後からの検索が驚くほど簡単になります。

【ステップ3】「デジタル共有」で情報の伝達漏れを防ぐ

最後のステップは、受信した情報をスタッフ間で共有する仕組み作りです。現場の文化に合わせて、最適な「共有の場」を選びましょう。

案A:共有フォルダー(Google ドライブ等)で保管する

受信したPDFを自動でクラウド上のフォルダーに保存します。「利用者ごと」「月ごと」に整理し、「過去の書類を後で見返したい」という現場に向いています。

案B:チャットツール(LINE WORKS等)で通知する

FAXが届いた瞬間にチャットへ通知を飛ばします。「タイムリーに、すぐに全員に知らせたい」という現場に最適です。

案C:介護ソフトの掲示板に取り込む

普段使っている記録ソフトの掲示板や書類管理機能にアップロードします。「使うツールを増やしたくない、記録と一緒に管理したい」という現場におすすめです。

あやトロ講師(タダカヨ)からのアドバイス

介護現場のICT化を成功させるコツは、「100点満点を目指さないこと」です。

「FAXを全廃して完全ペーパーレスに!」と意気込みすぎると、現場は混乱してしまいます。まずは『チラシの印刷を止める』といった小さな成功体験から始めてください。
共有方法も、チャットが馴染まないなら共有フォルダーからで大丈夫。『紙を取りに行く手間が減って楽になった』という実感が、次のステップへ進む勇気になります。ICTはツールに過ぎません。その先にある、『利用者様と向き合う時間を5分増やすこと』を、みんなで大切にしていきましょう。

まずは「印刷しない設定」から始めよう

介護現場のICT化は、大きな変革ではなく、日々の小さな不便を解消することから始まります。

  • まずは今の複合機の設定を確認する(印刷を止める)。
  • 慣れてきたらクラウドFAXでどこでも見られるようにする。
  • 現場に合ったツール(フォルダーやチャット)で共有する。

このスモールステップなら、無理なく「FAXの印刷」を減らしていけるはずです。紙に縛られない働き方を実現して、もっと心にゆとりを持てるケアの現場を作っていきましょう。

「FAXをなくす」というと大きな壁に感じてしまいますが、「印刷紙を減らす」という視点なら、現場の皆さんも「それならできそう!」と前向きな一歩を踏み出せるはずです。

今回のコラムが、介護現場の皆さまの負担を少しでも軽くし、利用者様と向き合う温かい時間につながることを心から願っています。